去る、10月29日㈯に生活環境部主催の生活講演会を実施いたしました。
今年度は「思春期の親子のコミュニケーションー子どもの自律と自立を支えるためにー」というタイトルで早稲田大学の本田恵子先生にZoomにてご講演いただきました。中学高校のご子息との対応の日々を送る保護者の皆様にむけた講演会となりました。講演内容としては、アンガーマネージメントを含む気持ちの整理についてだったり、信頼される親子関係についてだったり等、内容は多岐に渡りました。
当日は最大167名の方の参加があり大盛況となって終えることができました。
講演会の最後には、前もって参加者の皆様から頂いているアンケートから質問をいくつか司会が選び、本田先生にご回答いただくような形となりました。
本報告の最後に本田先生が回答していただいた質問をご紹介いたします。
当日の講演会の様子
本田先生提供のスライド・講演会の様子
本田先生提供のスライド(NG集)
講演会当日の流れ
今回の講演会の最後に選んだ質疑応答と本田先生の回答を報告します。
1. 自立について
〇 自分で考え自分で計画を立てて自分で行動できるようになるためにどう促したら良いか。衣類の着脱や物の整理整頓、時間管理など基本事項も含めて自立させるための秘策などありますか。
(回答)
毎朝起こして、学校に出すまでのご苦労はストレスですね。親御さんだけではなく、
うるさく言われ続けるお子さんもストレスだと思います。マイナスの相乗効果になってしまっているようなので、まず、本日の講演会のNG集の言い方を変えてみてください。お子さんが自分で活動するためには、「実行機能」が活性化している必要があります。これは、3歳から5歳で育ち、最もトレーニングができるのが3年生から4年生ですが、この時期に保護者がお世話をしすぎていた場合には、この力が育っていないので、トレーニングすることから始めてください。
以下に自立に必要な要素をお伝えします。「実行機能」という脳の部分です。
(1)本人に「~したい(欲求)」 あるいは 「~をしなくてはいけない(責任感)」が生じていること
(2)(1)をやり遂げる「価値」を見出していること
(3)やり始める、きっかけ「スイッチ」を自分で押せること
(4)難しくても、別のやり方をする方略を複数もっていること
(5)めんどくさいと思っても気持ちを切り替えるストレス耐性があること
(6)以上を繰り返しているうちに、行動が「自動化」されていきます。
2. 接し方について
① 生活についてどのくらい手を離すべきかわからない。声かけしないと、起きない、勉強しないです。
(回答)
「~しない」という見方を「~をしている」に変えてみてください。
「声掛けしたら、起きる」 なら耳は働いているようですし、起きる気持ちはあるようです。あと、何を足し算したらいいか、お子さんと話し合ってみましょう。
② 思春期の男子に対しての親の関わり方で、子供の自主性を尊重する関わり方について知りたいです。
(回答)
自我(自分の考えや意見)が生まれてくるのが中学2年生ごろです。哲学的になります。命や人生、将来のことなどを考え始めますが、まだまだ未熟です。なんでもできそうな「肥大した自我」もあります。プライドを傷つけないようにしましょう。
(1)子どものちょっとした行動から「何を大切にしているか」に気づいてください。
例:漫画雑誌が雑然とおいてあっても「とってある」場合は、中に何か大切なものがある可能性もあります。
(2)やろうとしているときは、待ちましょう
「今、やろうと思ったのに」と子どもが怒るのをよく聞きます。
親が先読みしすぎて「~やったの?」「~の時間だよ」と スケジュール管理や「展望記憶(これから行うこと、未来への記憶)」の役割をしていれば、子どもはそのの脳の力は使いません。
子どもの自主性を育てたい場合は、「自己調整機能」が働くように、子どものスイッチが入るペースを見守ってください。
3. 学校生活の中で
〇 提出もれが頻繁にあるようなので、学校からの宿題・課題をすべて把握したい。小学生の頃は、塾のカリキュラムなどの管理を親がしていたため、何もないとちゃんとやっているのか心配になってしまう。過干渉すぎるのだろうか。
(回答)
親子で二人三脚の入試、ごくろうさまでした。一方で、これまで、自分で整理整頓することや計画することをトレーニングしていなかった子供にとっては、その力を学んで日々練習するところから始める必要があります。
【学校にお願いできるなら】
① ネットのクラス掲示板の活用
授業計画(シラバス)や、提出物一覧を挙げてもらう。
宿題の提出が、ネットのクラスルーム機能のBoxの学校が増えています。
② 見えるところに、提出物カレンダーを貼っておく(家で)
③ スマホなどでのアラーム機能の活用
④ お友達との声の掛け合い
☆ 親がやっている間は、子どもは動きません。本当に自立をさせたいのか、学校生活で提出物をきちんと出させたいのか、目的を決めましょう。
☆ 発達の特性で、整理整頓が苦手な場合は、相談機関で実行機能のトレーニングをしていくことも考えられます。
4. 信頼関係について
〇 信頼し合える親子関係を築くには、どうしたらよいですか?
(回答)
信頼し合える関係というのは「一人の人間として 対等の関係」になることです。そのためには、まず親が子どもを意思を持った人間としてみることができるかです。「私が信じたい子どもでいてほしい」ということではありません。
また、子どもにとって親は 信頼できる存在でしょうか。対等のためには、お互いが信頼し合えることが大切です。
(1)わが子の「ありのまま」を理解して受容しましょう。
(2)「理想のこども」を思い描いて、「できていないところ」ばかりを指摘していると子どもは、親から離れます。あるいは、親の前では、親が求める姿しか見せなくなります。子どもが「どうありたいか」「どうなりたいか」を探します。
(3)「あなたのためにやってるのよ」「言ってるのよ」「将来必要なのよ」等は 子どもにとってではなく、親にとっての事柄です。
(5)問題を切り分けたら、「子どもの問題は、子どもが解決」しやすいように、相談にのります。子どもが一番嫌うのは、「頼んでないのに、勝手に先生にいいつけた」大人が出ると、中学生以上では、子どもが「親に代わりにやってもらってる」と余計にバカにされます。いじめが悪化するのもこのパターンです。
2022年10月29日 実施